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ある日の算数の授業
算数、数学の指導をしていると、「問題文に書いてある数字から適当に式を立てる」ということが癖になっている子が見られる。
たとえばこういう問題。
秒速12mのオートバイがある。このオートバイが 分走ったときに進む道のりを求めなさい。
まず問題文を読んで何を考える?
式を考えます。
ちょっと待って(笑)いきなり式を立てようとしてもうまくいかないよ。
だいたいこういうやりとりから始まる。
まず秒速12mって書いてあるよね。これって、どういう意味?言葉で説明してごらん。
ここで、すらすら言える子もいるが、言えない子もいる。
秒速12mっていうのは、1秒間に12m進むっていう意味ね。まず1秒をイメージしてごらん。よーい、どん、・・・1。これが1秒ね。12mってどれくらい?だいたい教室のここからここくらいね。1秒間でこのくらい進むんだって。イメージできた?
結構速い。
そうだね。オートバイって書いてあるからね。じゃあ、分かったことをノートに書いてみよう。
(ノートに「1秒間で12m進む」と書く)
OK!じゃあ次ね。この「1秒間で12m進む」を見て、どんなことを考える?
・・・???
なるほど。じゃあね、たとえば1個500円の缶バッジがあるよ。これを見て何を考える?
2個で1000円。
いいね。そうだよね。3個で?
1500円。
ねっ?1個500円っていう情報を見たら、2個だったら・・・3個だったら・・・5個だったら・・・10個だったら・・・ということを考える癖をつけよう。そしたらさ、1秒で12mって書いてあるから。ここからどんなことが分かる?
2秒で24m、3秒で36m。
そうそう。どういう計算をしたら24mになったの?
2×12。
そうそう。はい、ここが大事なんだけど・・・『何秒かが分かれば、進んだ道のりも分かる』って分かりますか?
はい。
ね、ここ(~秒)が分かれば、こっち(~m)も分かるよね。じゃあ分かったことをノートに書いてごらん。
よし。じゃあ、問題文をもう一回読んで、考えてみ。
ここで生徒が 分という数字に注目し、 分に直す。
分に60をかけて15秒に直す。
60+15=75秒。
12×75で900m。
ここまで自力で進むことができた。
良いね!できたね。よし、じゃあこの問題を解くときにどういうところが難しかったか。どういう発想が必要だったかを自分の言葉で書いてごらん。
生徒のノートを見ると、具体的な数字が並んでいて、一応書けてはいるのだが、うまく抽象化できていない。
具体と抽象って言葉は聞いたことありますか。
ないです。
ここで具体と抽象のお話をする。
理解できた?じゃあ、もう一度、この問題を解く上で大事なこと、考え方をノートに書いてごらん。
改めて生徒のノートを見ると、こんな感じで書いていた。
・1秒で~mと見たら、2秒で~m、3秒で~mと考える。
・分を秒に直して考える。
よく書けているね。最初に比べて、ちゃんと抽象化できてるよ。こうやって、間違えた問題は自分の言葉で説明を書くようにしよう。そうすれば、似たような問題で、同じように考えられるようになるよ。
「考え方を言語化する」という回路を身につけさせることは、なかなか大変なことである。
だが、それができれば、これから先、いろいろな場面で活かせるようになるだろう。