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スランプ必要論
私が最近読んでいる棋書(←予測変換されなかったので一応説明しておくと、将棋の本のことです。)に、とても良い文があったので紹介したい。
初段を目指すのにどうしても身につけないといけない感覚なので試行錯誤を繰り返してほしい。最初はうまくいかないし、場合によってはスランプに陥るかもしれない。しかし上達にはスランプが絶対に必要である。なぜならスランプは、なんとなくやって成功したり失敗したりしていたことを、ロジックで考えて再現可能にしようとする過程で発生する停滞の状態なのだ。この停滞状態を抜けるためには試行錯誤を繰り返すよりない。
遠山雄亮『将棋のロジック』2022/9/22(マイナビ将棋BOOKS)
将棋を指していると、負けが続くことがある。
あるいはどうしても越えられない壁のようなものを感じる。
趣味で取り組んでいる私ですら、その壁の厚さ、高さに辟易しそうになるのだから、プロを目指して勉強している方々、あるいはプロである棋士の方々からすると、スランプは本当にしんどいことだろう。
さて、そのようなしんどいスランプの時期に、どう対処するべきか。
これは将棋に限らず、さまざまな事柄に通じるものがあると思う。
筆者は「上達にはスランプが絶対に必要」と言っている。
「スランプなくして上達なし」ということだ。
なんと力強い、そして心強い言葉だろう。
何をやってもうまくいかない時期というのは、メンタルをかなり削られる。
その対象から逃げたくなることもあるだろうし、自己の存在意義を揺るがすときもある。
多くの人は、「スランプなんてしんどいものはできれば経験したくない」と思っているのではないだろうか。
しかし、「上達にはスランプが絶対に必要』と思っていれば、むしろスランプがないほうが問題だと思われるし、スランプの訪れを好ましくさえ思える。
これまで幾多のスランプを乗り越え、そのたびに試行錯誤を繰り返して乗り越えてきた棋士だからこそ生まれる感覚だと思う。
スランプを乗り越えるために必要なことは、「なんとなく成功したり失敗したりしていたことを、ロジックで考えて再現可能にしようとする」ということである。
これを勉強に落とし込むとどうなるだろうか。
たとえば「どうしても計算ミスが減らない」というスランプが来たら、どうしてその計算ミスが起きたのかを分析し、対処法を考える。
「いつも時間が足りなくて、長文を読み切れない」というスランプが来たら、何にどれくらい時間がかかっているのかを分析し、どういう練習をすれば時間を短縮できるかを考える。
「模試になるとどうしても焦ってしまって普段通りに解けない」というスランプが来たら、なぜ焦るのか、どうしたら普段通りの精神状態をキープできるのかを考える。
細かく分析して、定量化して、言語化する。
そういうことを通じて、今まで無意識で処理してきたことを意識化できたとき、スランプの出口(=上達)が見えてくるのだろう。
ただ、この分析や言語化は、多くの小中高生にとって難しい営みだと思う。
そもそも自己客観視することは大人でも難しいことだし、スランプに陥っているときは精神的にも落ち込んでいて視野がせまくなっていることだろう。
こういうときには他者によるコーチングが効果的だ。
私たちはよく生徒たちと面談をするが、必要に応じてこのような役割を積極的に担っていきたいと思っている。