-MENU-
2023年度入試を振り返って
4期生たちのはじまり
2023年度入試が終了した。
unit4期生は、新中1生2名の状態でスタートした。
私のスマホには、この2人が中学生になりたてのときの写真が残っている。
まだあどけなさが残り、しかしとても真っ直ぐで賢そうな表情をしている。
そこから1人、また1人と、少しずつ仲間が増えていった。
この学年の子たちは入塾の段階で勉強に対する負のイメージを強く持っている子が多かった。
ある子は初回の体験授業のときに
勉強、嫌いなの?
と私が聞いたところ
すごく嫌いです!
と即答していたし、他のある子は常に勉強に対して自信を持てないでいた。
それまで別の塾に通っていたものの、どのように勉強すればよいか、羅針盤を示してもらうことができずに途方に暮れていた子もいた。
そんな彼らが「この塾で頑張ろう。」と思ってくれたということは、「ここならば頑張れるかもしれない。」と思うような何かを感じ取ってくれたのだろう。
それは授業の雰囲気かもしれないし、他の生徒の頑張る姿かもしれない。
あるいは単に家から近かっただけかもしれないが、ともあれ、嫌いな勉強、苦手な勉強を頑張ってみようと思ってくれたわけで、私たちとしてはその気持ちになんとか応えたい、できるだけ早く成長の手応えを感じてもらいたいと思いながら、ともに勉強してきた。
結果が見えないものへの取り組み
彼らが中2に上がるとき、弊塾の「学校選択対策コース」の案内をした。
これは中2の授業と同時並行で中3の英語・数学の授業に出てもらうコースだ。
埼玉県公立高校入試の学校選択問題は、かなり難易度が高い。
難関私立高校レベルの勉強にもある程度触れておかないと解けない問題も含まれている。
中2のうちに中3内容の先取りを行い、中3スタート時にはある程度の知識を蓄えておくことで、早期から入試問題演習に取り組めるようにしておくと、学習計画に余裕が出るし、+αの内容にも取り組める。
およそ半分くらいの生徒がこのコースを受講していた。
当然、その授業でも宿題も出るわけで、授業についていくのも宿題をこなすのも大変だったと思う。
また、中3の内容を先取りしたからといって、中2の内容において直接的な効果が見られるわけではない。
いわば「先々への貯金」である。
すぐに結果が出ない(見えない)ものに取り組むのは大変なことだっただろう。
実際、途中で取り組むのがしんどくなってしまった生徒もいた。
私からその子に声をかけ、休みの日に1:1で補習をしたこともあった。
今は大変だと思うけれど、ここで努力しておいて良かったと思えるときが来年、必ず来る。そのときのために、コツコツ頑張ろう。
そう声をかけた。この子はいつか結果が出ることを信じて、我慢し、努力を積み重ねてくれた。
後述するが、この子は中3になってからおおいに飛躍することになる。
無反応、そして自身へのいら立ち
そしていよいよ彼らが中3になるタイミングが来た。
このあたりの時期に、私たちは一つの不安を抱えていた。
それは彼らのコミュニケーション能力に関してである。
簡単に言うと、口下手、反応ベタの子が多かったのだ。
unitの授業は決して一方的な講義ではない。
私たちからの発問や働きかけに対して、生徒たちから出てくる反応、返答があり、そのキャッチボールによって授業が成り立っている。
授業の主役は講師ではない、生徒である。
学びの主体は彼らなのである。
しかし、彼らのレスポンスは弱いものだった。
何かを聞いたときの返答の声が蚊の鳴くような声だったこともしばしばだったし、英文の音読や何かの返事も私の聴力検査をされているのかと思うくらい小さいものだった。
あのね、この授業、一応全国ネットだから(嘘)、他のみんなが聞こえるように発言してあげてね(笑)
そんな風によく言ったものだった。
クラス全体へ質問を投げかけたときの反応も乏しかった。
また、他者と積極的にコミュニケーションを取ろうという姿勢もあまり見られなかった。
きみたちね、これから大人になるときに、そんなにリアクションが少なくてどうするの。挨拶や返事、ちょっとした反応が感じ良く、明るくできるだけで、どれだけきみたちが得をすることか。その逆がいかに損なことか……。
損得だけの話ではない。積極的に反応することによって、きみたちが授業をより楽しめるようになる。楽しくなればそのぶんだけ学力も伸びる。面白いときは大いに笑えばよい。悔しいときは素直に悔しがればよい。もっと感情を出せるようになろうよ。
授業を中断し、そんな話をすることが幾度となくあった。
もちろん、彼らがスムーズに感情を表に出せる環境をつくれていなかったのは、私自身の指導の未熟さが多分にあろう。
だからこそ、私なりに色々と試行錯誤し、彼らが生き生きと、のびのびと授業ができるような環境づくりを模索した。
何はともあれ、彼らが最も伸びるであろう学習環境をつくれていないことに、不安や苛立ちを覚える時期だった。
見え始める変化
そうこうしているうちに夏期講習が始まった。
その初日。
丸一日勉強したあとの彼らの表情は、私が思っていたのとは違った。
楽しかったです!
この夏、頑張ります!
と言って帰宅する子。
授業が終わったあとも数学の問題に没頭する子。
彼らが前のめりに勉強するようになり、勉強する姿に勢いを感じた。
それと同時に、少しずつ授業中の雰囲気も変わってきた。
授業でちょっとした豆知識を披露したときに、驚いた表情で目を見開く子が出てきた。
私がちょっとした計算ミスをしたとき(←お恥ずかしい)などに
先生、そこが違っています。
などと言ってくれるようになった。
理科の授業で私が「作用・反作用の力」を実演して見せているときに、塾の壁を盛大に破壊して穴を空けてしまったときなど、みんな大声でケラケラ笑っていた。
明らかに、彼らの反応に良い変化が出てきた。
それを見て、とても嬉しく感じたのを覚えている(ありがとう、壁)。
私が他学年の授業をしているときに、隣の部屋で生田目が行っている授業で元気な笑い声が聞こえてくることも増えた。
授業を担当していない講師たちからも「最近、中3生の子たちの反応が良くなりましたよね。」という話が出てきた。
ちなみに、彼らの中3の通知表は少し驚く上昇幅を見せた。
9科合計で
32→35、 25→32、 33→39、 34→37、 35→37、 27→32、 36→42、 33→37、 32→40
と、大半の生徒がしっかりと成績をキープないし大幅に上げてきた。
毎日一緒にいると背が伸びたことに気づきにくいのと同じように、毎日彼らと一緒に過ごしていると彼らの成長に気づきにくい側面もある。
しかし、彼らが学校生活においてもきっちりと取りくんでいることが分かり、「いつの間にか、この子たちはこんなにできるようになっていたんだな。」と感心した。
本当に一生懸命に取りくんでいる子たちもいる一方で、「もう少し頑張れるだろう。なんであと一歩踏み込んだ努力をしないのだ。」と思わせる子たちもいた。
きみたちが頑張っていることはよく分かっているよ。でも、もう少し頑張れるところもあるよね。受験が終わったときにできるだけ後悔しないように、いまやれることに打ち込むことが大事なんだよ。
という話を何度もした。
ただ同時に、むりやり勉強させても意味がない、とも思っていた。
試験とは学力のみを試されるのではない。
試験に際して、どこまで主体的になれるか、どこまで真剣になれるか、どこまで自分を追い込めるか。
そういうことも試されているのだと私は思う。
そしてその部分は、あくまでも「自分で」気づき、「自分で」行動するしかないのだ。
そういう気持ちを他人が持たせることはできない。
良くてきっかけづくりまで、である。
彼らに対しての私のハードルが高いのか、どうしても「もうひと頑張り」を望んでしまう場面が少なくなかった。
それは塾に来る時刻のちょっとした差異であったり、質問に来る回数であったり、小テストへの取り組み方だったり、さまざまだったが、彼らと面談をしながら、少しでも彼らが全力で頑張るように働きかけをしつつ、辛抱強く待ち続ける日々が続いた。
彼らの名誉のために言っておくと、彼らは高校受験生として、しっかりと勉強しているほうに入ると思う。
平日の夕方は学校が終わったあと塾に来て自習、急いで帰宅し、晩ご飯を急いで食べて、19:20から22:00まで授業か自習。
秋、冬は授業後に英語の補習を22:30まで行っていた。
だれでもできることではない。
迎える入試本番
そして入試の時期を迎えた。
最後の2週間。
彼らの勉強のギアが一段上がったのが分かった。
公立受験生は「これぞ受験生」という集中力で取り組んでいた。
また、すでに一足早く受験を終えた私立受験生たちも、手を緩めることなく勉強に励んでいた。
「やはり、これが彼らの本気なのだな……。」と思った。
入試本番は多少の緊張はあったと思うが、例年の受験生と同様、みな自分の実力を発揮できたようだった。
そして合格発表。
残念ながら、全員が希望の高校に合格するというわけにはいかなかった。
悔しい思いをした子もいる。
「本当によく頑張って、ここまでやってきたね。」という気持ちと、「お互い、まだやれたことがあったよな。」という気持ちの両方がある。
彼らへの指導、はたらきかけが正しかったのか、正直なところ今でも分からない。
しかし、そういう思いを抱えながらも、そこから何かを学び、前進すること。
それが彼らに、そして私たちに必要とされる姿勢だと思う。
合格発表後に行われた受験慰労会。
カラオケ、ダーツとみんなで遊び、塾で美味しいものを食べた。
みんなよく笑い、とても盛り上がった。
今日という一日が終わってしまうのを寂しそうにしている子たちもいた。
私たちスタッフは、彼らの動きの一つ一つを見ながら、一年間での人間的な成長を感じた。
一年前の私が想像していなかった楽しい空間がそこにはあった。
一年という時間をかけて、「みんなで楽しく一つの空間を共有する」ということができるようになったのだ。
卒塾のタイミングでそのような姿を見せたくれた彼らに心から感謝したい。
生徒たちへ
これから高校生活が始まる。少し羽を休めたら、またコツコツ頑張っていこう。部活動に思い切り励むも良し。遊びたいときは存分に遊べばよい。ただし、遊びたいときに堂々と遊べるよう、そのぶん普段はコツコツ頑張っていかないといけないし、結果も出していかないといけないよ。入試結果で喜んだ人も、悔しい思いをした人も、また新たなスタートだ。新しい環境で、新しい人たちと出会い、新しい気持ちで頑張っていこう。きみたちがたくさん成長できる高校3年間になることを願っています。私たちと毎日一緒に頑張ってくれて本当にありがとう。
保護者の皆様へ
一年間、お子様の受験生活を支えてくださり、本当にありがとうございました。お子様のモチベーションが下がっているときにご連絡、ご相談をいただいたこと、「今日、こんなことを塾で褒められたと喜んでいました。」とご様子をお伝えいただいたこと、毎日送り迎えをしていただいたこと、塾の授業の時間に合わせて晩ご飯を用意していただいたこと、「自習に行ってらっしゃい。」と送り出してくださったこと、心より感謝申し上げます。unitにお通いいただきまして、本当にありがとうございました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
この記事を書いた人
進学塾unitの塾長。数学・英語・理科担当。生徒と保護者、スタッフの笑顔を見るために日々邁進中。基本的にいつも機嫌が良く、無駄に元気。
趣味:将棋(将棋ウォーズ1級)、コーヒーを飲みながらカフェで数学、ダイエット 特技:リバウンド
進学塾unitの塾長。数学・英語・理科担当。生徒と保護者、スタッフの笑顔を見るために日々邁進中。基本的にいつも機嫌が良く、無駄に元気。
趣味:将棋(将棋ウォーズ1級)、コーヒーを飲みながらカフェで数学、ダイエット 特技:リバウンド
Twitterはこちら R_makes_rb
Twitterはこちら R_makes_rb